音楽が聴こえる
ーーー
シュウが話しの腰を折って頼んだルームサービスは、あっさりとした和食膳だった。

まだ濃い食べ物は、食べる気がしないらしい。

と言っても、その御飯すら大して食べていないみたいで。

「そんな食欲で大丈夫なの?」

「……うん」

シュウは溜息を吐きながら、米粒を数えているとしか思えない鈍さで、機械的に箸を口元へ運ぶ。

「あたしよりウエストが細いとか洒落になんない」

「そんなことないよ。……比べてみる?」

「比べるまでもないし」

冗談まじりでも色っぽく誘うシュウを一蹴して、白身魚をつついた。

……大丈夫。
普通に話せてる。

さっきシュウに抱き寄せられてから、ここに来たことを後悔し始めていた。

その場に居るだけで芸能人になった、ましてや病み上がりのシュウと目立つ行動をする訳にいかないと思っていたけど。

それでも。
ここはホテルで密室だ。
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