音楽が聴こえる
「シュウ達、今は休暇中なの？」

「うん。入院したせいもあるけど、元々ツアーが終わったから」

御飯を無理矢理口にしながら無難な話しを振り、それにシュウが答える。

さっきからずっと、その繰り返し。

何処か淡々とした会話に心の中で苦笑した。

何なんだろ。

対人スキルなんて大して無いあたしが、会話を繋ごうとするこの空気。

食事が進むにつれ、シュウから醸し出され始めたヒリヒリするような緊張感みたいなものが、あたしを不安にさせる。

だから、どうでも良いような会話をしたくなるんだ。

「……ご馳走様でした」

あたしは箸を置いて、シュウを見る。

彼も明らかに大きな溜息を一つ吐いて、あたしを見詰めた。

「ソファの方でコーヒー飲もう？ マアコのデザートも頼んで置いた」

手を差し伸べられたけど、その手を無視して立ち上がる。

でもシュウはその手を無駄にしなかった。

彼はあたしの首元に手を伸ばし、地味な黒いシュシュで束ねただけの髪を一気にほどく。

「ちょっとっ」

突然のことに、手を挙げて抗おうとしたあたしの腕を反対に弾いたシュウは、あっさりとメガネまでも取り去った。

「マアコはやっぱりこっちの方が良い」
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