音楽が聴こえる
あたしはシュウの返事に頷いて、黙々とケーキを頬張った。

おぉー。
コーティングチョコとアプリコットジャムが絶妙。

あたしの隣りでずっとヒリ付く空気を垂れ流してたシュウが、漸く重い口を開いた。

「……なぁ。マアコは…………才能って……枯れると思う?」

質問の真意を探ろうと首を捻って隣りを見ると、シュウは苦しそうな顔をして言葉を紡ぎ出そうとしていた。

あたしは、一つ溜息を吐く。

「そんなの知らない。あたしにはそういう才能は無い」

こんな返事が欲しかった訳ではないらしく、彼の顔は歪んだ。

「酷いな、マアコは。それって本気で言ってるのかよ」

この期に及んで何を言うんだろう。

あたしはザッハトルテに添えてある生クリームをたっぷり乗せて口に運ぶ。

「……才能が無いから、あたしはシュウに捨てられた。違うの?」

何か言い訳できるのか、と言ってやりたい気持ちを抑えて事実を告げた。

それが、あたしから見た事実。

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