音楽が聴こえる
「だからさ、シュウは自分の欲求に正直だっただけじゃん? それで、良いじゃない。何で、今更蒸し返しに来たの?」

そんなの、あたしは望んでいない。

「……恨まれても仕方が無いと思ってたけど、そんな投げやりな言い方されるとは思わなかった」

シュウは拗ねた顔を隠すように俯いて、片手で顔を覆う。

「あたしにどんな幻想持ってる訳よ。仲間と思ってた人達に捨てられて、ずっと底辺さ迷ってろって?」

「悟と……悟と新しいバンド組むと思ってた。あいつが抜けるって言った時」

「『infinity』は悟が結成したバンドで、漸くシュウに逢って理想系に近付いた筈なのに? 私じゃ意味がない。……そのくらい分かりなよ」

「…………マアコは、俺がアイツを追い出したって思ってんだろ?」

あまりにも低く小さい声に、顔を覆う手の隙間からシュウの目を覗いたものの、泣いてるんじゃないかと思うくらい、更に歪んだ顔に思わず目を反らした。
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