音楽が聴こえる
シュウは何に拘ってんの？ と、喉元まで出掛かったけど、口に出来なかった。

あたしに塩を贈って欲しいのか、擦り込んで欲しいのかも良く分からない。

分かるのは彼が弱ってるってことだけで。

あたしはこんなシュウを知らない。

悟にまだ拘ってるのか、と聞かれた時はシュウに見捨てられた自分だけが、この時間の流れに乗れてないんだと思ってた……けど。

シュウも同じなのかな。でも、なんで？


「……はじめは有頂天だったよ。お前等が居なくてもデビュー出来て、やっと念願叶ったって。でも、そんなの長く続かなかった。……そりゃそうだよな、終点はそこじゃないんだからさ」

『完成度の高いバンド』と着実に知名度を上げ、最近はコンサートチケットもすぐに完売するらしい。

悟は誇らしげに語っていた。
まるで自分のことみたいに、嬉しそうな顔さえして。

だからあたしは、順調にその目指した階段を上っているとばかり思ってた 。
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