音楽が聴こえる
「いいよ、もうっ。……何でも」

あたしの尖った言い方に、悟は首だけ振り返ると。

「拗ねんな、腹減ってんだよ。トッピング選ばせてやっから」と宣った。


ーーー

「ピザ食ったら、久々に連弾でもしようぜ」

痩せの大食いである悟は、五枚目のピザを咀嚼しながら言った。

……何で二人なのにLサイズ?

「やだ。悟のピアノはフリースタイルだから、合わせづらい」

トッピングをハーフアンドハーフで頼んだからあたしだって少なくとも二枚は食べたいけど、やたらと大きくて、苦戦中。

せめて、クリスピータイプにしておけば良かったのに「そんな薄いの腹にたまんねー」と、あたしの提案は却下され、もっちりした厚い生地を注文された。

その上、悟はきっちりデザートまで頼んでいて、今、冷蔵庫の中にはティラミスが鎮座している。


「もう、いらねーの?いらねーなら、そいつ寄越せ」

ティラミスを食べたいがためにピザの耳を残すのはいかがなものか、と考えていたのがばれたらしい。
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