甘いヒミツは恋の罠
「俺は知ってる」


「え……?」


「お前が毎日遅くまで残って資料室でデザインを研究しながら試行錯誤してあのネックレスを生み出したこと、あいつらにその過程がわからなくても、俺は知ってる。単なるやっかみだ……気にするな」


 朝比奈からこんな言葉をかけられるとは思っていなかった。それは傷ついた紅美の心にじんわりと優しく染みこんでいった。


「朝比奈さん……」


 紅美が朝比奈ににこりと微笑んだその時だった。


「紅美さん!」


 人ごみの中から大野が手を振りながら現れた。また厄介者が現れたというように、朝比奈はわざとらしく大きくため息をついた。


「なんだ、瑠夏も一緒だったのか」


「お疲れ様です。大野さん」


 朝比奈の顔を冷たく一瞥すると、ぱっとにこやかな笑顔に切り替わる。
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