甘いヒミツは恋の罠
 そっと顎をとられて上向かされると、その艶っぽい大野の目に紅美は微動だにすることができなかった。大野がゆっくりと唇を寄せて、吐息が唇に触れそうになった時――。


 コンコンとノックの音がして我に返ると、紅美は慌てて身を離し、くるりと大野に背を向けた。


「失礼します。本日は、ようこそおいでくださいました」


「あぁ、ほんとグッドタイミングだね」


 レストランのフロアマネージャーの律儀な挨拶に、大野はあからさまに邪魔をされたと不機嫌そうな顔した。


(何やってるんだろ私……)


 危うく大野の色香に惑わされそうになってしまった。紅美は我を取り戻すと、マネージャーの引いた椅子に腰を下ろした。
< 148 / 371 >

この作品をシェア

pagetop