甘いヒミツは恋の罠
「朝比奈さんは弱い人なんかじゃない、あなたの会社の社員に私のデザインを馬鹿にされた時だって……ちゃんと庇ってくれたんです」


「ふぅん……もしかして、紅美さんは瑠夏のことが好きだったりするの?」


「な……」


 自分でも気づいていない感情を揺さぶられたような気がして思わず言葉に詰まる。


「図星かな? でもそのほうが奪い甲斐があるね、面白そうだ」


「へ、変なこと言わないで!」


 追い詰めるような大野にいたたまれなくなった紅美は、つい声を荒らげてしまう。しかし、そんな狼狽える紅美に大野はニヤリと笑った。


「私……帰ります」


 膝の上に敷いていたナプキンをテーブルに置いて、紅美はさっと席を立った。


「送っていくよ」


「結構です。まだ電車もありますから」


 そう言ってバッグを手に取るとそそくさとその部屋を後にした。





「皆本紅美……瑠夏、あの女は絶対に手に入れるぞ」


 ひとり残された大野が、透明なグラスに夜景を透かしながらボソリと呟いた――。
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