甘いヒミツは恋の罠
※ ※ ※

(さ、寒い……)


 空調の完備されていない資料室は、日が落ちるに連れて室内温度がどんどん下がっていった。携帯もコートも全てオフィスに置いてきてしまったため、連絡手段も防寒手段もない。ただひたすら誰かが奇跡的に資料室に来てくれることを祈るしかなかった。


(朝比奈さんのこと……変に探るようなことしたバチが当たったのかも……)


 膝を抱えながら縮こまり、背中にはひんやりとした冷たい壁の感触がした。


(このまま誰にも発見されずに捜査願いとか出ちゃったらどうしよう……)


(寒い……怖い……誰か助けて――)


 まるで雪山で遭難しているような気分だった。真っ暗で寒くて、けれど、自分ではどうすることもできない。


 ここへ来てからかなり時間が経っている。


 とっくに会議も始まってしまっているに違いない。こんなにも暗くて凍えそうな資料室の中で唯一、紅美のルビーのネックレスだけが、まるで暖を与えるような炎のように輝いていた。
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