冷たい上司の温め方

真っ青な顔をしているくせに、人のことを気遣ってばかりだ。


「それじゃ、これは遠慮なく使わせていただきます。
運転手さん、ここで降りますから会計してください」

「話、聞いてたか?」


楠さんはこの際無視だ。
こんな病人、ひとりで置いていけるわけがない。

私が手を引っ張って無理やり降ろすと、「はぁ」と溜息をついている。


「だから、帰れ」

「タクシー行っちゃいましたから」


素知らぬ顔でそう言うと、彼はやっと観念したようだ。


「失礼します。取りあえず着替えてベッドに入ってください」

「もういいから」


いいわけがない。
足取りがふらついている。


この部屋に来るのは二度目だ。
あの時は治療してもらったけど、今日は逆だ。

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