冷たい上司の温め方

ムカつくという意味を込めて、『一応女』を強調しておいた。

だけど、こういう好意は素直に受け取っておいた方がいい。
私が住所を告げると再びタクシーは走り出した。


笹川さんがいないくなってしまうと、無口な楠さんとどんな会話をしたらいいのかわからなくて、私も黙ってしまった。


笹川さんの家から十五分ほどでマンションにつき降りると、楠さんが窓を開けた。


「ありがとうございました。お気をつけて」


私が頭を下げると、楠さんがやっと口を開く。


「麻田、よくやった」

「えっ?」


それは……今日の総務の件?


「だが……三課が苦しくなったら、いつでも飛ばしてやる。異動希望を出せ」

「いえ、私は……」


私がまだ話し終わらないうちに、楠さんは窓を閉めてしまった。

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