冷たい上司の温め方

「ふぅ」


頭を使う仕事ではないものの、同じことの繰り返しはなかなか疲れる。
だけど……疲れたのはそのせいだけではない。

たまたまこの仕事があって、三課から逃げ出せたわけだけど……。


――コンコン

少し休憩しようと思っていると、ドアをノックする音がした。


「はい。どうぞ」


てっきり朝日さんだとばかり思ったのに、そこにいたのは……。


「麻田さん、お疲れ」


さわやかな笑顔の笹川さんだった。


「お疲れ様です」


突然の笹川さんの登場に、目が泳ぐ。
朝、思わぬ形で告白されたばかりなのだから。


「あー、すごい量だね。疲れただろ?」

「いえ。大丈夫です」

「飯、行かない?」

「……はい」


心臓がドクンと大きく打った。
どうしよう。今日は、ふたりきりはなんだか緊張する。

だけど、断ることもできずに、笹川さんに続いて会社を出た。

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