冷たい上司の温め方
ふたりで食堂に行くことは珍しくはなかった。
だけど、社外にランチに行くのは初めてだ。
「ごめんね。社食じゃ、ちょっとね」
笹川さんは会社近くのレストランに私を連れて行くと、困ったように微笑んだ。
「日替わりでいい?」
「はい」
テキパキと注文を済ませた笹川さんは、じっと私の顔を見つめる。
「今朝、言ったことだけど……」
私は思わず顔を伏せた。
緊張がピークに達して、手が震える。
「俺、本気なんだ。
麻田さんが三課に来てくれたとき、かわいい子だなと思った。
だけど、それだけじゃなかった。
君はいつだって一生懸命で真っ直ぐで、話していても楽しくて……いつの間にか好きになってた」
笹川さんが水の入ったグラスに手を伸ばして、ギュッと握ったのが見えた。