冷たい上司の温め方
「そういえば、楠さんと笹川君、今日一言も口きいてないみたいだけど、なんかあった?
もともとあんまり話す人達じゃないけど、なんかこう……ピリピリしてて。
さっき、二課で打ち合わせをしていたら、こっちまで重い雰囲気になったよ」
「いえ、なにも……」
やっぱり、険悪なのか。
「そっか。僕が気にしすぎかな。
麻田さんがいなかったから、そう感じたのかもね」
それから、三十分もかからずに、作業はすべて終了した。
「ありがとう。ほんとに助かった。麻田さん、一課に来ない?」
「いえ、私は……」
林常務のことかあっても、三課を出たいと思わないことに気がついた。
「残念だな。麻田さん、ホントにテキパキ動いてくれるから、助かるのに」
「ありがとうございます」
それから資料運びを手伝い人事に戻ったのは、終業時間の十七時半が過ぎたころだった。