冷たい上司の温め方

グデングデンに酔っているという訳でもなさそうだ。
少し顔は赤いけど、店員との受け答えははっきりしている。


居酒屋を出て駅の方向に歩き出そうとすると、突然笹川さんに腕を引かれ、気が付くと……。


「麻田さん」


笹川さんの腕は、思ったより筋肉質だった。
いつの間にか抱き寄せられていた私は、胸が苦しくて泣きそうになった。


「笹川さん、やっぱり酔ってます」

「酔ってない。俺は本気だ」


彼は私を解放してくれない。
そのまま強く抱きしめられて、なすすべがなくなってしまった。


「お願いです、離してください」

「楠さんは好きにしろと言ったんだ。俺は必ず君を手に入れる」


笹川さんの声がいつもより低い。


「お願い!」


私が大きな声を出すと、ようやく腕の力を緩めてくれた。

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