冷たい上司の温め方

「好きなんだ」


私の目を真っ直ぐに見つめる笹川さんが、少し苦しそうな顔をしてつぶやいた。


「ごめんなさい。私……帰ります」


今日は冷静に話せそうにない。
笹川さんの私を追い詰めるような目が、怖い。


私は笹川さんを残して、走り出した。
途中で頬に伝わる涙に気が付いても、走る勢いを緩めることはなかった。

後ろで私を呼ぶ笹川さんの声が聞こえたけれど、振り向くこともしなかった。
自分の気持ちに、はっきり気が付いたからだ。


私は、やっぱり……。


笹川さんに抱き寄せられたとき、胸が苦しくてたまらなかった。

私が求めているのは、この人ではない。
私が抱きしめて欲しいのは……。


駅の近くまで来ると、バッグの中からスマホを取りだし、あの人の番号を表示する。

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