冷たい上司の温め方

部長と楠さんは、なにやら小声で話しだした。
その会話は、残念ながら私達のところまでは聞こえない。


「おはようございます」


固唾をのんで楠さんの様子を見ていると、髪を綺麗にカールさせた山際さんが出社してきた。


「おはよ」

「麻田さん、大丈夫でした? 
私、たくさんの人に囲まれちゃって。
テレビに映っちゃったらどうしよう」

「よかったわね」


くだらないことを話しかけないで。
今はそれどころじゃないの。


「……そう」


私の不機嫌に気が付いた山際さんが、トーンダウンして自分のデスクに座った。


「麻田さん。……麻田さん?」

「えっ、はい」

「顔が怖いよ」


私の頬をムギュっとつかんだ笹川さんは、私とは違って落ち着いて見える。


「そんなこと言ったって」

「楠さんは、クビになんかならない。
それだけ貢献してきたんだから」
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