冷たい上司の温め方
私は恥ずかしくなった。
正義のヒーローはきっと負けない。
笹川さんのように、楠さんのことを信じていればいいのだ。
しばらくすると楠さんが戻ってきた。
彼がどんなことを言いだすのか、早く聞きたいのに、聞くのが怖い。
「社長室に行ってくる」
「わかりました」
笹川さんが返事をすると、楠さんは私に声をかけることなく出て行った。
はぁ。息が止まりそうだった。
『解雇』という言葉が彼の口から飛び出すかもしれないと身構えたのに、一言もなくて拍子抜けしたくらいだ。
だけど安心できたわけではない。
社長室に行くなんて、尋常ではない。
ひとたびパソコンの前に座ってみたものの、なにをする気にもなれない。
モニターに映る落ち着かない自分の姿に、呆れることしかできなかった。