冷たい上司の温め方
「このくらいの接客もできないなんて、シモベすら不合格だ」
『シモベすら』って失礼この上ない。
だけど、ピンチを救ってもらったことには違いない。
それに……後ろに並ぶお客さんたちもそろそろ限界だ。
文句をぐっと呑み込んで、私はまた笑顔を作った。
「ご注文は」
「このセットをひとつ。コーヒーをブラックで」
「お持ち帰りですか?」
「あぁ」
何事もなかったように注文した楠さんは、メガネのフレームに触れた。
楠さんのくせのようだ。
「オーダー入ります」
「はい」
さっきの重苦しい雰囲気がやっと払拭され、活気が戻ってくる。
私がハンバーガーを準備して袋に入れていると、楠さんが再び口を開く。
「お前、俺の名刺捨ててないだろうな」
「は、はい。あります」