冷たい上司の温め方

あっ、私好みのイケメン。

思わず目で追ってしまうような美形の人を発見して、心踊る。
けど……。


「麻田さん。まずはモップがけね。
特に規則はないけど、お客様の邪魔にはならないようにだけ気を付けて」

「はい」


私はといえば、そんなイケメンビジネスマンに気にかけてもらえるような格好をしてはいない。


「私はあっちからするから。こっちよろしく」

「わかりました」


遠藤さんが行ってしまうと、「はぁ」と盛大な溜息が出る。
どうしてこんなことになっているのかさっぱりわからないまま、仕方なく掃除を始めた。


だけど、実は掃除は嫌いじゃない。
部屋がきれいなのだけが取り柄と言ってもいいくらいだ。

どんなに忙しくても、ビシッと整った部屋でないと眠る気にならないほどで、一応自分の部屋は片付いている。

< 64 / 457 >

この作品をシェア

pagetop