冷たい上司の温め方
こんな大きなビルの会社だって、薄汚れていては取引なんてしたくないだろう。
それを陰で支えているのがこの人達なんだ。
作業着を見た瞬間「えー」と叫びそうになった自分を恥ずかしく思った。
そして、今まで遠藤さん達のことをどちらかというと卑下した目で見ていた自分を。
「ごめんなさい!」
「えっ? どうしたの、突然」
「私……最初は楠さんの下働きだと思ってここに来ました。
それなのに、掃除をやらされるのだと知って、本当は怒ってました」
遠藤さんに頭を下げると、「あはは」と笑い出す。
「なんて素直なお嬢さんなんでしょうね。
そんなこと黙っておけばいいのに」
頭を上げると、叱られると思ったのに優しい笑顔だ。