冷たい上司の温め方
遠藤さんの話を聞いて、楠さんのことを少しは見直した。
口は悪くても、仕事に対する情熱は人一倍なのかもしれない。
「まぁ、彼も忙しくなっちゃって、前みたいには無理だけど、それでも時間があれば手伝ってくれたり差し入れしてくれたりするのよ」
遠藤さんはお母さんのように優しい笑顔で話を続ける。
「でも、楠君が『勉強させて欲しい』と人を連れてきたのは初めてだったの。
なにを教えたらいいのか聞いたんだけど、いつもの仕事を手伝わせてくれればいいからって。
でも、あなたを連れてきた理由がわかる気がする」
「私を?」
遠藤さんはモップを再び動かしはじめた。
「あなたに相当期待してるわね、彼」
なんで? どうしてそうなる?