それでもキミをあきらめない
「どっかに咲いてる」
言われてみれば、黄色い小さな花が放つ独特の甘い匂いがあたりを包んでいる。
「ほんとだ」
「……秋だな」
ぼそりと前を見つめたままのつぶやきに、わたしの心はむずむずとくすぐったくなる。
高槻くんは季節の訪れを感じるのが好きだ。
春には桜を見上げ、モンシロチョウの動きを目で追い、
夏には木の幹で羽を震わせるセミを飽きることなく見つめている。
遠くから眺めているだけだった彼の小さな癖を、こんなに間近に見られるとは思ってなかった。
学校から駅まで続くイチョウ並木を高槻くんと歩きながら、晴れ渡った高い空を見上げる。
わたしは本来よくしゃべるタイプなのだけど、
わたしが話した内容をあとで星野彗たちと笑うのかなと思うと、どうしても口数は減ってしまう。