それでもキミをあきらめない



「どっかに咲いてる」


言われてみれば、黄色い小さな花が放つ独特の甘い匂いがあたりを包んでいる。


「ほんとだ」

「……秋だな」


ぼそりと前を見つめたままのつぶやきに、わたしの心はむずむずとくすぐったくなる。


高槻くんは季節の訪れを感じるのが好きだ。


春には桜を見上げ、モンシロチョウの動きを目で追い、

夏には木の幹で羽を震わせるセミを飽きることなく見つめている。


遠くから眺めているだけだった彼の小さな癖を、こんなに間近に見られるとは思ってなかった。


学校から駅まで続くイチョウ並木を高槻くんと歩きながら、晴れ渡った高い空を見上げる。


わたしは本来よくしゃべるタイプなのだけど、

わたしが話した内容をあとで星野彗たちと笑うのかなと思うと、どうしても口数は減ってしまう。


< 126 / 298 >

この作品をシェア

pagetop