それでもキミをあきらめない
教室に戻るまで、わたしはたぶん宙を浮いていたはずだ。
地面を踏みしめた感覚がない。
わたしだけ地球の重力から解放されたみたいに、心も体もふわふわとただよってしまい、自分の席までたどり着くのにずいぶん時間がかかった。
「なんの話だったんだ?」
となりから朝子の声がしたとたん、世界が鮮やかになる。
眠っていた感覚が急に冴えて、体のなかであばれはじめる。
寒くもないのに、全身がふるえる。
「告白、された」
心臓が踊り狂って、教室のなかをわけもなく走り回りたい衝動にかられた。
椅子の上で縮こまって、あふれだしそうになる感情を必死に抑える。
そんなわたしを横目で見て、朝子はぽつりと言った。
「……へえ。よかったじゃないか」
「うん、信じられない。嬉しい」
誰にも気づかれないように、息を潜めて過ごしていた学校のなかで、こんな気持ちを手にすることができるなんて思わなかった。