それでもキミをあきらめない

 
頭の芯が痛い。
 
こめかみがじんじん響いて、視界が定まらない。
 
よろけるようにしてキッチンに向かい、冷蔵庫から麦茶を取り出していると、二階からどたどたと足音が降りてきた。


「母さん、俺今日さ――て、なんだ、奈央か」
 

振り向いたわたしを見て、兄の翔馬(しょうま)がぎょっとする。


「おい、なんだその顔!」
 

駅から猛ダッシュで帰ってきたわたしの、ずり落ちたメガネと、汗と涙と鼻水でひどいことになっている顔を指さして、げらげらと笑いだす。


「すっげーブサイク! これはひどい! 兄として土下座して回りたいレベル!」
 

からだを折って「ひーお腹イターイ」とわめいている兄に、煮え立っていた感情が爆発した。


「うるさいばか! それもこれも、全部兄ちゃんのせいじゃない!」
 

わたしの叫びにぴたりと笑うのをやめて、兄は眉をひそめる。


「はあ? なんで俺のせいなんだよ。お前がブサイクなのは親のせい」
 

言いかけて、はたと首をかしげた。

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