それでもキミをあきらめない

 

階段でわたしを突き飛ばした男子は高槻くんのクラスメイトらしい。
 
彼は後夜祭で漫才を披露するそうで、その練習をしたいからと高槻くんに仕事を押し付けて逃げたのだ。


「ほかの奴はみんな忙しいし、かといって俺ひとりで売り歩くのも抵抗あるし」
 

パスタ容器の輪ゴムに一枚ずつお化け屋敷のチラシを挟まさせてもらいながら、わたしはちょっとだけ笑ってしまう。


「高槻くんらしい」

「え?」

「う、ううん。こっちの話」
 

あわてて笑みを引っ込めたけれど、心の中はほっこりと温かい。


高槻くんはマイペースでちょっとぼうっとしたところがあるから、気が付くと面倒事を押し付けられている、ということがたまにある。
 
責任感のない人間なら放っておきそうなことでも、高槻くんは投げ出さない。

 
飄々としているように見えて、たまに不器用。
 

そんなところも、わたしにとってはすごく魅力的な彼の一面だった。



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