それでもキミをあきらめない
顔の筋肉を使って、血色のいいピンク色の唇を引き上げてみると、にこりと、鏡の中の彼女が笑ってくれる。
「かわいい……」
信じられなかった。
鏡を見て、自分を可愛いと思う日が来るなんて。
この姿なら、高槻くんのとなりにいたって不自然じゃない。
トイレを出て、置いてあったトレーを拾い上げる。
売上金も返さなきゃいけないし、ひとまず高槻くんのクラスに行くためにわたしは階段を上りはじめた。
誰かとすれ違うたびに、意味もなく緊張する。
まるで悪いことをしているみたい。
3階までのぼると、もとは1年の教室だった部屋が、さまざまなお店に形を変えてお客を待ち構えていた。
右の奥にあるお化け屋敷を背にして、左の廊下に足を向ける。
4組の駄菓子屋、5組のフリーマーケット。
6組の教室が近づいていくたびに、高揚していた気持ちがだんだん沈んでいった。