幸せにする刺客、幸せになる資格
千村さんが中に入り、代わりに大和くんが私の横に座った。

『あとは家族だけで過ごしてもらうよ。コトが俺のことをいくら"水じゃない"と言っても、所詮今は他人だし、俺はこの距離で様子を伺えれば十分だから。亜香里ちゃん、車を出してくれてありがとう』

程なくして、病室の中から琴乃ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

『俺が、コトを支えるから』
「うん。私もノリも応援するよ」

琴乃ちゃんのお母さんのお葬式は、密葬の形で営まれた。

結婚した時の経緯から親戚筋の列席はほとんどなく、お母さん側の両親は既に亡くなっていることからお母さん側の親戚とも疎遠になっており、火葬場で見送ったのは、お父さん、琴乃ちゃん、大和くん、ノリ、私、琴乃ちゃんの担任の先生だけだった。

『墓は、琴乃がいつでも行けるように、安西さん家の近くのお寺さんに建てることにしました』

紅葉さんのお墓と同じお寺さんってことだね。

納骨と四十九日を終え、千村さんがうちのリビングに来ていた。
もちろん、琴乃ちゃんもいる。

その間に摘果もあり、忙しい毎日だった。

『ノリさん、お願いがあります』

琴乃ちゃんはそう言うと、正面に座るノリを見つめた。
< 144 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop