幸せにする刺客、幸せになる資格
"また来週末行くから"と、紗英夫婦が帰り、爺ちゃん婆ちゃんも帰り、

『私も帰ります』

と、亜香里さんも帰ろうとした時、僕は彼女の手から血が出ていることに気がついた。

「どうしたんですか?その手」

僕が見るに、枝で手の甲を切ってしまったのだろう。

『いえ、このくらい大丈夫ですから』

確かに子供じゃないので、痛みには耐えられるだろう。
ただ、滲んできた血を見ると、手伝ってくれた上に怪我をさせたことを申し訳なく思った。

『私が、手袋をしていなかったのが悪いんです。家に帰ってから、自分で手当てします』

でも、女性の手が傷つくって、あんまり良くないよね。
治療が遅れると、痕が残るかも知れないし。

「一度うちで手当てをしましょう。病院に行くまでではないとは思いますが、消毒しないとバイ菌が入ってしまうかも知れないですよ」
『でも、勝手に手伝って、勝手に怪我をしたわけですから、御迷惑はお掛けできないです』
「いいから、来てください」

強引に僕は亜香里さんの怪我をしていない左手を引いて、家に入った。
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