幸せにする刺客、幸せになる資格
『唇が腫れちゃうね』
「いいの。もっとして」

私がおねだりをすると、ノリさんは微笑んで、私に深いキスを落としてきた。

リビングに響くリップ音。
長い時間味わう、お互いのキスの味。

でも、ここにいるのは26歳と27歳の男女。
キスだけで終わるわけがない。

『僕の部屋、行くか』
「うん」

ノリさんの誘いに私が肯定したのは、その先に進むことを了承したのと同じこと。

初めて入るノリさんの部屋は、ベッドとクローゼットがあるだけの殺風景なものだった。

『僕、女性とこうなるの、久しぶりなんだ。成人して初めてするから、器用じゃないだろうけど・・・』
「そんなの関係ない。相手への気持ちの問題」
『ありがとう。どこまでも優しいんだね、亜香里・・・』

そう言って私を呼び捨てにすると、私を優しく抱いてくれた。

『綺麗な体』

一糸纏わぬ姿になった私とノリさん。
私の体に触れながらノリさんは言った。

『やっぱり美味しい空気と水が、白くてきめ細かい肌を作り上げているのかな』

そう言いながら、手のひらと唇で私の全身を味わう。

女性を抱くのが久しぶりなんてとんでもない。
その彼の行為だけでも、私は感じてしまう。
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