幸せにする刺客、幸せになる資格
しばらく余韻に浸らないと、ボーっとした頭が回転しそうもなかった。
けど・・・
ノリが避妊具の後処理をし始めたことで、沈黙が破れた。

「用意周到だったんだね。こうなること予想していたの?今日」
『うん。今日じゃなくても、近いうちにそうなるかなと思って用意しておいた』

そう言うと、ノリは私の隣に再び寝そべった。

『僕、君に同情されているだけかと今、こうなる直前までは、そんな思いがあった』
「違うよ。貴方は自分が思っている以上に"男子力"があるもん」
『男子力?』
「きっと、ここに来ることなく東京で御曹司として暮していれば、モテていること間違いなし」

情事の後の照れもあって、からかうように私は言う。

『何を今更、恐ろしいことを言わないでくれよ』
「恐ろしいこと?」
『東京にいれば、それは苦労なく今頃父親の下で次期社長として働いていただろうな。でも今の僕には考えられないし、そんなレールの上に乗っていたら、亜香里にも出会えなかったし、もっと遡れば大和にも会えなかった』
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