幸せにする刺客、幸せになる資格
ノリは私の頭を胸に抱きしめた。

『亜香里に出会えてなかったら、僕は・・・きっと何の目標もないまま終わっていただろうな。それに、紅葉以上の女性に出会えるとは思っていなかったし、そう考えたら、ここに住んで良かったと思うし、君が東京の水が合わなくて戻ってきたと言うのなら、都会のコンクリートジャングルにも感謝だ』

私のことを紅葉さん以上と言ってくれたことは嬉しかった。けど・・・

「私は私だから」
『ん?』
「紅葉さんと比較して欲しくない。今と、これからの私を見て」
『もちろんだよ』

体を離して互いに見つめ合うと、

『大和が帰ってくるまでもう少し時間がある』

というノリの言葉を合図に、私達は何度も愛し合った。

――気が付くと、窓の外は茜色になっていた。

あっ、私あれから寝ちゃったんだ。

隣にいるはずのノリがいない。

すると下から"アハハハ"と笑い声が聞こえてきた。
大和くんの声だ。

何も着ていなかった私は、急いで服を身に着けて下へ降りた。

下では、和室でノリと大和くんがじゃれ合っていた。
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