幸せにする刺客、幸せになる資格
『その経験があるから、今の君があるんだろ?僕は君に愛されたい。そして、愛したい。過去を恐れるなよ。人間誰だって、大なり小なり過去の傷は抱えているものだ。それを受け入れてこそ、本当の夫婦のあり方なんじゃないのかな。それは妥協じゃなくて、過去さえも愛せる、それが本当の愛情っていうものだと思う。違うかな?』

私は首を横に振った。

「私、ノリが好きです。大好きです。だから、過去を隠しちゃいけなかったんですよね。安曇野に戻れば言わなくても済むだろうって勝手に思っていたことが、返って健吾さんたちにまでご迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした」

玲奈さんの隣の椅子に座った健吾さんは、私を見て微笑んだ。

『俺も過去に負った傷を、疑似恋愛に委ね、結局亜香里さんと同じような症状に陥っていたんだ。でも、その経験を踏んでこそ、お互い最高のパートナーに出会い、慈しむことが出来るんだと、俺は玲奈を出会って思う。だから貴方も、存分にノリを愛せばいい』

健吾さんはひとつ息をつき、そして微笑んだ。

『それに、ノリに過去を知られたくなくて震えちゃうなんて、亜香里さんは相当ノリが好きなんだ。大事だと思います、そういうピュアな心。貴方はトラウマになんてなっていない。ノリが好きな気持ちがちょっと溢れただけ』
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