幸せにする刺客、幸せになる資格
「そんな由緒ある家じゃないだろ。先代の爺さんが作った安西フーズをただ父さんが継いだだけの家じゃないか」
『ノリ、それはお父さんの前で言うべき言葉じゃないでしょ!』
「気持ちを正直に話しただけですけど?」

"おい、やめないか"と、父さんが僕達の会話を止めた。

『ノリの言う通りだ。あの時自分の世間体を守るためだけに激昂してお前を追い出した。でもそれは、たかだか35年ほどの歴史でしかない自分の父親が大きくした会社を、何の考えもなしに継いで、お前が世間では不貞と思われることをしたらそんなちっぽけな自分の地位を守りたいだけの決断だった』
『あなた、何を言っているの?あの時の判断は間違いないの。現にこうしてノリが来てくれたじゃない。私達を頼ってくれたんだから、それでいいじゃないの』

母さんの言っていることは、全く持って僕の本意ではない。

「母さん、僕は別に父さん母さんに頼りたくてここに来たわけではないんだ」

母さんの地雷を踏まないよう、慎重に言葉を選ぶ。
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