幸せにする刺客、幸せになる資格
『そうよね。私達がノリを勘当する決断をしたんだもの。それがあったから貴方という人との出会いがあったんだもの。自分の力で幸せを勝ち取ったのよ』
『お前には、幸せになって欲しい。勘当した側が言うのも何だが、出来ればその様子を見守らせて貰えたら嬉しい』

父さんの言葉に、亜香里の顔が笑顔になった。

『私はぜひ、そうして頂きたいと思っています』

亜香里ははっきりと父さん母さんに伝えた。

『お暇があれば、安曇野にも遊びにいらしてはいかがでしょうか。十割そばの美味しいお店、お連れしますよ』
「それ、僕も連れて行ってもらったことないよ、亜香里」
『じゃ、今度の休みに、大和くんと一緒に行こうね』

父さん母さんが安曇野に来るかは分からないし、無理に来いとも言わない。
けれども、亜香里の言葉が、僕の親としての心に響いてくれれば、それでいい。

僕は大和の父親。
同じ人の親である僕の両親に、小さくそう願った。
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