幸せにする刺客、幸せになる資格
勘当され、父親から食品業界のつてで紹介されたりんご農家の人から、さらに高齢でりんご園を廃業しようとしていた蜂矢さん夫婦を紹介され、土地やりんごの樹木を引き継いで、今に至る。

「大変だったでしょうに・・・慣れないりんご農家の仕事に、小さい子供もいたわけですよね」

そう私が言葉を発した瞬間、

『同情、しましたか?』

ノリさんと大和くんが帰ってきた。

「の、ノリさん、お帰りなさい。お邪魔・・・してます」
『お邪魔するのは構いませんが、婆ちゃん、あまり山形さんに余計なことを言わないでくださいよ』
『ノリくんも少しは人の同情を素直に買ってもいいと思うんだけどね』
『余計なお世話ですよ。農協の方にお話しするような内容ではないですし』

大和くんにオレンジジュースを注ぎながら、ノリさんは言う。

『でもいらしたのはちょうど良かったです。山形さん、摘果用のハサミを出来れば明日、早めに持ってきてもらいたいのですが』
「分かりました。明日の朝持って行けるように手配しておきます。メーカーはノリさんが使われているのと同じものでよろしいですか?」
『お願いします』
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