【短編】愛して欲しい。
慌てて服を着て、玄関へと走る。
「あ、早かったな」
なんて、わざとらしいセリフなんだよ!
と自分でも突っ込みたくなるくらいの言葉を吐いた俺に、
「お風呂入ってたの?」
何も思わず聞く莉衣。
「ん、あぁ。まだ時間あるかなーって思ってさ」
「……そか」
そうとだけ返事をすると、それから何も話さなくなってしまった。
いつもの場所。
いつもの事。
いつもの空間。
俺は、これに流される。
こんな時に、莉衣と目が合うとキスしてしまう。
漏れる甘い声に、もっと深いキスをしてしまう。
再び合う虚ろな目を見ると押し倒してしまう。
俺を愛しく呼ぶ声を聴くとコントロール出来なくなる。
だけど、今日は……駄目だ。