【短編】愛して欲しい。
「あのさー……」
テレビの音だけが聞こえる部屋で、俺の声は妙にデカく聞こえた。
ふと絡む視線。
俺は慌てて目線を逸らし俯く。
ドクンドクン、胸が深い音を立てる。
何、緊張してんだよ。
ちょっと話するだけだろーが。
しっかりしろよ、俺!
自分自身に気合を入れ、もう一度顔をあげて言った
「あー……………………DVD観ねぇ?」
言葉がコレかよ~~~。
驚きを隠せない顔で俺を見つめる莉衣。
ほら、明らかに不振がってんじゃん!
俺の馬鹿ッ!!!
「いや、あ、その。
ツ、ツレのバイト先で安く借りれてさ。
人気あるっつぅのを借りたんだけど俺一人じゃ、ぜってー観ねぇまま返しちまいそうだし……」
慌てて嘘で固める。
本当は、水城に借りたクサイ恋愛映画だけど。
あいつは存在自体クサイ奴だから……って、そんな事はどーでもいいんだよっ。
ここを、どうやって切り抜けるか。それが問題だ。