【短編】愛して欲しい。
「あ、水城?」
《お、今忙しかったか?》
「いや。どうかした?」
《んー。あの映画観たかなぁって思って》
あぁ、あの映画ね。
《あ、観たんだ?》
少し上擦った水城の声が気持ち悪い。
「観てねーよ。あんな恋愛映画」
《ふーん♪ で感想は?》
「だから観てねぇって。んな事なら電話切るぞ!?」
《あ、だよな。莉衣ちゃん待たせちゃ悪いもんな》
「は!? つーか、今一人だって!」
《はいはい。と冗談はこんくらいにして、頑張れよ》
「……」
《好きなら強引さも武器になるって》
「うん。すんげぇ好き……だから……言ってみるよ」
《そか、なら頑張れ!》
「……ん」
携帯を半分に折りポケットに入れると、トイレから出た。
部屋に戻るとDVDは消えてて。
真っ暗な部屋には誰も居なかった。