Only

ふと庭を見ると、父さんがいるのに気がついた。

俺が輝の家に行ってから、かれこれ1時間以上は経っているはず。

空を見上げる父さん。

…別れたことを、言うべきだよな…


「父さん」

そう俺が呼び掛けると、父さんはゆっくりとこっちを向いた。

「さっきは、悪かった…いきなり怒鳴ったりして…
それで、俺らさ、別れたんだ。兄弟として家族になるのも、悪くねーな、って思って」

…嘘が父さんにバレていると分かっていても、嘘を貫き通す俺。

「だからさ、再婚してくれよ。俺は、父さんについていく」

「…光。」

まっすぐ俺を見る父さん。

「俺は、お前達を大切にしたい。それと同じく、愛さんも、大切にしたい」

「…分かってる」

「お前達が別れを望んでいないのも、充分、分かっているんだ。
…それでも、別れを選んでくれたんだね?」

「……おう」


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