Only

動けないでいると、光は目の前まで来て、あたしを見据えた。

獲物を捕らえた獣のような目。

あまりの威圧に、一歩後ずさりするあたし。

だけどその分、光も距離を縮めてきて。


「お前さ」

ようやく、光が口を開いた。

「大地と付き合うの?」

「え…?」

もう、そんな噂が流れてるの?

さっき、大地に手を引かれたのを、やっぱり見られてたのかな。

それとも…勘?

動揺して、何も言えないでいると。

「答えろよ」

さらに距離をつめてくる光。

「…っ、別に光には関係ない事だよ?あなたにはちゃんと、彼女がいるわけだし。ほら、早く外行かなきゃ、準備終わっちゃう」

そう言って、光を避けようとすると。


ダンッ。

あたしを覆うようにして、後ろの壁に手をつく光。

「違う……」

苦しそうな声で、呟く。

「違う、俺とアイツは……っ」


< 205 / 308 >

この作品をシェア

pagetop