理想の都世知歩さんは、




【SIDE 和平 袿】




クリスマスを目前にした昼、古びた呼び出し鈴を押す。


間もなくドアが開かれた。


「!?」


ドアの隙間からお化けのように顔を覗かせた宵一にビク、と肩は跳ねる。


目というか、瞼、が。


化け物かとツッコみたくなるくらいには腫れていた。



「悪いな…寒いのに…悪いな…」

「いや何か、こっちの方がごめん」

「何でだよ…いらっしゃい」


怖い。



瞼に明太子でもとって付けたんじゃないかと思う。

明太子に呼ばれた俺は、中に入って大人しく席についてお茶をいただいた。

人に貰ったらしくお茶は玉蜀黍茶だったけど、それを台所から説明していたけど、瞼の上の明太子が気になって正直それどころじゃない。


「あ、これ電子マネー」

「ありがとう」


昨日受け取るつもりだったそれを受け取る手は怖さに震えた。


「何か震えてる」

「うん」


「衵、げんき?」


「何言ってるの?昨日確実に久々に会ってるよね」


何をどう誤魔化したいのか知らないが、宵一は無言になった。

俺は玉蜀黍茶を一口。


ややこしいけど明太子はアイリオンだからか藍色のものが身の回りに多い気がする。


でも部屋には尊敬するリオンマンモチーフの黄金の物が置いてあったりする。

恐らく恥ずかしいのだろう。

密かなコレクションなのだろう。



因みに言っておくと、家を出る前に此処に向かうと知らないままのそのそ見送りに来た風邪拗らせ中の衵は、宵一ほどではないけどやや明太子気味だったから。


何となく瞼が重いなあとか言ってたから、鏡を見て驚くだろう。



「撮ってもいい?」


「…まじで?」





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