理想の都世知歩さんは、
腕についていて熱を持った右側の頬を慌てて指先で擦る。
寝起きのひんやりとしたそれが、頬についた服の縫い目痕を消してくれることを望んで席を立った。
たたた、と、左手にスマホを持ったまま玄関へ駆け寄る。
――――――その時私は、忘れていた。
「はーい」
彼にあれ程繰り返して言われた言葉。
あの時は、菜々美さんだったから良かったけど、って続けられた言葉。
それを忘れてドアノブに手を掛け、捻った。
『俺が家に居ないとき』
「都世知歩さん?今開けるね」
『鍵、』
『開けないように』