月光-ゲッコウ-


1度家に帰って、仕事へ行く準備をする。


時間になると、迎えの車に乗り社長の自宅へと向かう。


3年間続けていたコレも今日が最後。






「おはよう、千歳。」

『おはようございます。』

車に乗り込む社長に続いて、車に入る。


20分程で会社に着く。



社長室に入って、すぐあたしは話をきり出した。


『社長にお話があります。』

「なんだ?」


タバコに火をつける社長の目の前に、1枚の封筒を差し出した。


『今日で会社をやめさせてください。』


差し出した封筒は退職届け。


あたしの言葉とその封筒を見て、社長は目を見開き立ち上がる。


「…何を言っているんだ千歳…。」


『3年間、お世話になりました。社長には感謝しています。でもあたしっ、一緒に居たい人が出来たんです。』



乱暴に灰皿にタバコを押し付けると、あたしに近寄り腕を掴む。


えっ?


痛い…。


来客用のソファーへと押し倒される。



「誰にも渡さない、行かせないと言ったはずだッ!!私から離れるなど許さない!」


しゃ、社長…?


あの時と同じ顔だ。


いや、その時より恐い顔をしてる…。


社長の顔があたしの首筋へと埋まる。


『い、いやぁッ!!』


社長を思いっきり突き飛ばす。




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