【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
「あれ…確か…山根くん…だったかな?」
聞いただけで胸やけしてきそうな声に、1つ深呼吸してから振り返る。
「山岸ですよ。…会長」
「あぁ、そうか。ごめん」
絶対わざと間違えたに決まってるのに、爽やかな笑顔と謝罪の言葉を向けられて、オレは反撃もせずに口を閉じる。
「それ、ちょっとやりすぎかな」
会長が「それ」と指したのは、オレの髪色。
先週染め直した髪は、完全な茶色に染まっていた。
ところどころ金髪のメッシュを入れてみたんだけど…やっぱりアウトか。
「はは、そうかなって思ったんですけど(笑)
見逃してもらえたり…?」
オレが誤魔化すように笑うと、会長もオレを真似てか、ははっと笑みをこぼす。
その辺の女子から黄色い悲鳴が聞こえそうな笑顔…
「1人を特別扱いすると収集がつかなくなるからね。
いくら朱莉の「お友達」でもそれは無理かな」
わざと強調された「お友達」がやけにしゃくに障る。
オレと朱莉の関係をあまりよく思ってないんだよな…
…案外独占欲強かったりして。
「その朱莉はかっこいいって言ってくれたんですけどねぇ」
ちょっとイヤミを入れて返すと、意外にも会長は口を閉じた。
あれ…?
いつもの流暢な言葉はどうしたんだ?
…もしかして、結構効いてる??
予想外の反応を示した会長に、なぜだかオレまでもが戸惑ってしまって…
お互いしゃべらない状態が続く。
…どうしよう。
何か…
焦ったオレが何か話題を探そうと頭を働かせていると…
「朱莉も振った男に冷たくできないんだろうね。
優しい子だから」
会長がいつも通りの涼しい笑顔でそう言い放った。
…一番痛いところを的確に衝きやがった。
くそっ、なんだ、この敗北感はっ。
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