キミのための声






どうしよう
どうしよう




なんて言われるんだろう





パニックにも近い状態で
冷や汗をかいていると、
耳に入ってきたのは
建吾くんの柔らかい声。





「今から、愛梨沙ちゃんを
駅まで送るつもりなんだけど」





……柔らかい声、なのに




どこか棘があるように聞こえて





―――そう、葵くんを




挑発するような……








「……要らねぇんじゃねーの」







建吾くんの声より





何倍も





あたしの耳を震わせて





体全体に染みていく声。





……『要らない』って




それはどういう意味?




「それはないだろ?
こんな可愛い女の子、
こんな暗い時間に1人で
歩いてたら危ないよ」




呆れたような建吾くんの声に、
顔が熱くなったのが分かった。




……恥ずかしい。




葵くんの前だから、尚更。




葵くんはそんなこと1ミリだって
思ってないだろう。




だから恥ずかしいの。





頭上からジリジリと視線を感じて、
あたしは耐えに耐えきれなくなり
何とか声を出す。




「……け、建吾くん」




弱々しく震えた声。



変に思われただろうか。




「あたし……大丈夫だから」




「え?」




キョトンとしたような声に、
いまだに顔を上げられない。





「1人で…大丈夫だから」






―――もう、限界。





言い逃げするように
あたしは走り出した。





背後から建吾くんが
名前を呼ぶ声がしたけど、
振り切って走る。





……ごめんね、建吾くん




あたしやっぱり駄目かも。




葵くんの声聞いただけで




まともに立ってられないんだよ。




特に今は



いつもみたいに




『葵くん』って




呼べない。






「はあっ…はあっ…」




さっきの場所から昇降口までなんて、
大した距離じゃないのに




あの張り詰めた空気のせいで




息が切れる。






―――なんなの




葵くんは何が言いたいの?




もう全然分かんない




あたしはどんな風な顔で
居たらいいの





「…も…やだっ……」




靴箱に寄りかかりながら、
上がった息のまま
小さく声をもらす。





やっぱり違うよ




葵くんから
『好き』なんて気持ち




1%だって伝わってこない




やっぱりあたしの片想いなの?




それって付き合ってるって
言えるの?





付き合ってて、いいの?





「………………」





……やめよう。




これ以上1人で考えたって
きっと何も解決しない。




どうせあたしは葵くんが
大好きでしょうがないんだから




別れたいだなんて
思わないんだから。




…馬鹿な女なのかな、あたし。





「……告白なんて、
しなければよかったかな…。」




そう呟いて自分の靴箱を
ガチャッと開けた時。






―――バンッ!と





勢いよく開けたばかりの
靴箱を後ろから閉められた。





そのまま靴箱に手をつく





"誰か"。





あたしの左肩の上を
長い左腕が通っている。





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