キミのための声





大ちゃんはグッと右腕を
あたしに向かって伸ばし、
あたしの頭にポンと手をやる。




「だからな、お前を
うざいとかきもいとか
消えろとか思ってるわけじゃない。」




「大ちゃん。」




「あぁ、わりぃ。」




「………どうぞ続けて下さい」




「そいつはな、ただ
好きになれねんだよ。
多分、お前の何かが
悪いとかじゃない」




「……ほんと?」




「お前の何かが悪くて
好きになれねんなら、
とっくのうちに振ってるよ
お前のことなんて。」




「……大ちゃん……。」




「まぁ最後のは聞き逃せ」




「…………はい」




いつ殴ろうかと
右拳を震わせていると、
あたしの頭に乗せている手で
わしゃわしゃと撫でてきた。




「だから、多分そいつは
自分のせいでお前を好きになれないって
分かってんだよ。だから振れない」




「…………………」




「自分が悪いのに
お前を振ることには
躊躇してるってこと」




「……だけど今日、
付き合ったこと後悔してるなら
続ける意味無いって言われた」




それは



振ろうとしてたんじゃ
ないのかな。




大ちゃんは「あ?」と
眉間にシワを寄せ、




「そりゃお前が
後悔してんなら別れるだろ。
"好きになれない、でも
振ったら愛梨沙が傷付く"
って状況なんだから、
お前が後悔してたりしたら
別れるしかねーじゃん」




「…そ…そういうこと…?」




葵くんは




そういう気持ちなのかな……?




大ちゃんは再び仰向けになり、




「さぁ。あくまで俺の
予想だから分かんねーよ」




「……大ちゃん」




「あ?」




「ありがとう」




こんなお兄ちゃんだけど、
真剣に話してくれた。




大ちゃんは少しだけ微笑んで、




「…頑張れよ」




そう言ってくれた。






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