キミのための声
いつの間にか、
浅い眠りについていた。
枕元で、携帯が震えている。
ブー、ブー と規則的に鳴る
不快な振動に目を覚まし、
携帯を手にとる。
電話だ。
知らない番号……
ぼーっとしたままの頭で、
通話ボタンを押す。
「……もしもしー…?」
『あ、もしもし?建吾だけど』
「……建吾…?」
『そう、小野崎 建吾』
「………あっ、建吾くん!?」
意識が鮮明になり、
慌ててと体を起こす。
『あははっ、寝てたの?』
面白そうに笑う声に、
恥ずかしくなる。
「うたた寝してた……」
『おはよ。』
「あ、おはよう!」
挨拶を返すと、建吾くんは
更に面白そうに笑った。
何が笑えたのか、あたしには
分からなかったけれど……。
『あー、てかいきなり
電話しちゃってごめんね?』
「ううん!全然大丈夫っ!」
『…その、あの後のこと…
心配になっちゃって』
「…あの後…?……あっ…」
……そうだ。
今日の放課後。
いきなり葵くんが出てくるから
建吾くんが駅まで送ってくれる
話だったのに、あたし
逃げちゃったんだよね。
『……大丈夫、だった?』
どこか控えめな聞き方に
俯きかかった顔を上げる。
「えっ?」
『葵に…何か、酷いこと
されなかったか?』
……酷いこと
は、何もされてないよね。
「…大丈夫だよっ?」
ぎこちない言い方になって
しまったのは、一瞬、
葵くんに押さえつけられた時の
ことが脳裏に浮かんだから。
『そっか…ならいいんだ。』
安心した声に、
本当に何も無かったとは
言えないと思い、
「ちょっと、色々…
言われたけどね……」
あったことを話すことにした。
『…色々?なんて?』
「ん、なんか…
あたしが付き合ったこと
後悔してるんなら
続ける意味ない、とか…」
『……うん』
落ち込んだようにも聞こえる
低い声で頷く建吾くんに、
あたしは続ける。
「それであたし、なんか
色々止まんなくなっちゃって…
思ってること、ワーッて
言っちゃったの」
『うん』
「そしたら……すごく、怒らせちゃって」
あんな葵くん
始めて見た。
「思いっきり押さえつけられて…
逃げてきちゃった」
『…大丈夫だったか?』
「うん、それは全然
大丈夫なんだけどさっ。」
そんなのよりも
ずっと
葵くんの冷たい目や
ひとつひとつが胸に
突き刺さるような言葉の方が
ずっとずっと辛かった。