キミとの距離は1センチ
「ってこれ、今人気のヤツじゃん。俺彼女と観に行ったよ」

「へぇ~。よかったですか?」

「まあ、おもしろかったよ。……けど、」



そこでなぜか、浅尾さんはちらりとわたしを見下ろして言葉を切る。

椅子に座ったまま、その反応に首をかしげて浅尾さんを振り仰ぐと。

わたしと目を合わせたまま、にやりと意地悪そうに浅尾さんが笑った。



「これ、ベッタベタのラブストーリーだぞ~? 佐久真に観れんの?」

「なっ、」



なぬーーーー!! 浅尾さん、わたしのこと馬鹿にしてんの??!

こんなからかいはいつものこと。この人はたぶん、わたしをいじるのがいたくお気に入りの様子だ。ナチュラル鬼畜お兄さんめ。

思わず頬をふくらませてその肩に軽くパンチをくらわせようとしたら、浅尾さんはひょいっと軽くそれを避けた。



「ちょっ、よけないでくださいよー!」

「おおこわ。佐久真はこんなんだしなぁ、ほんと、宇野は変わり者だよ」



わざとらしく肩をかばいながら、浅尾さんはそんなことを言って笑う。

……そういえば、浅尾さんと宇野さんは同期なんだっけ。この人にいつも紳士でナチュラル王子様な宇野さんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいです。
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